「卵をつかんだ手の形」の弊害・その3~「ハイフィンガー奏法」の産みの親~

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「卵をつかんだ手の形」の弊害・その3~「ハイフィンガー奏法」の産みの親~

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2018/10/06 「卵をつかんだ手の形」の弊害・その3~「ハイフィンガー奏法」の産みの親~

「卵をつかんだ手の形」の弊害・その3

「ハイフィンガー奏法」の産みの親

 

「正しい手の形」として、日本で古くから使われてきた「バイエル」や「メトードローズ」の冒頭に絵や写真がありますので、それを元に分析してみましょう。

 

まず「メトードローズ」の絵では、3指が♭シ(♭)を押さえていて、何と、ほぼ爪先が当たっているくらいに指が垂直に立っています。これでは幅の狭い黒鍵を滑り落ちる率が高くなってしまい、非現実的で信じがたい手の形です。

 

「バイエル」(全音版)では、原典版(ペータース版)にはない、日本人だけが考えている正しい手と悪い手の比較写真が数組あります。正しい手はどれも第3関節が盛り上がっているのはいいのですが、「第2指を弾く正しい形」では、第2関節が角ばり突出し爪先は同じく鍵盤に垂直に当たっています。

 

このように、ひと昔前までの長期間、日本の大半のレッスン室で使われてきた2大テキストは、指先がほぼ垂直に鍵盤に接しているのです。

 

では、私がなぜこの「正しいお手本」の手が良くないというのか、次にご説明します。2つの手の形に共通するポイントは、客観的に見て4つあります。①手首が下がっている、②第三関節が一番高い、③第二関節が角ばり突出、④指先が垂直に下を向いている、の4つです。

 

このうち後ろ2つは、日常生活の中ではあまり使われない形です。この非日常的な手の形を正しい形としてキープするには、練習中にこの4つすべてに、絶えず注意を払い続けなければならず、初心者が最初期にそれらを守りながら弾くのはとても困難なことです。多くの場合①手首が上がって無駄な力が入り②第三関節の山が崩れて、腕からの重さを支えられない状態になります。ピアノを弾く手にとって、最も重要なこの2つが失われてしまうのです。そして残ったのが後の2つ。「困った手の形」の原因になる2つが残るのです。

 

 初歩段階に、この「卵をつかんだ形」をキープしたまま、学習初期に、一音ずつはっきりと音を出すよう求められてマルカート奏法で学べば、第2関節を高く持ち上げて垂直に強く打鍵しなければなりません。こうして中村紘子氏が(恨みをこめて?)ハイフィンガー奏法」と名付けてその名を広められた、「硬い音色の困った手」が生まれ、それは、中村紘子氏が留学先で「100年前の(古い)弾き方だ」と告げられて、基礎からそれを直すという苦悩の始まりになったのでしょう

 

そしてこの困った「ハイフィンガー奏法」が、日本人の子どもが初めて出会う2大テキストと、その奏法で育った教師たちによって、日本中を覆いつくすほど普及してしまっているのです。

 

この奏法で一番困る事は、打鍵するために「指から」動きが始まることなのです。(その詳しい理由は、次回でお話します。)

 

また手首が上がるのは、初心者に多く見られるごく普通の事です。しかしそれに連動して一番大事な第三関節の支えが弱くなり、代わって第二関節が主役になって働くため 第二関節が出っ張ります。初心者のほとんどは、鍵盤を間違えずに弾こうとするので、往々にして意識は指先と第二関節に集中します。その結果手の形は、最悪の場合、第三関節がまったく働かずに陥没し、手首は力が入って高くなります。(主役になって働く関節はすべて必ず高くなり、肩を含めて身体のどこに力が入っているかが、見ただけでわかります。)

 

時たまそんな不自然な手の形をした学生に出会うことがあります。また第三関節が陥没していなくても、十分に働いていない例は、ピアノ教師はもちろん、まれにピアニストの中にもあり、レッスンで出会った学生の8~9割がそうです。

 

(中級以上の人でも、演奏中にこの第3関節の山を軽く押さえてみると、たいていはすぐにつぶれてしまいます。静止状態で予告して行っても、ほぼ同じになります。今度は生徒に私の手を押さえさせますが、特に力を入れて頑張る必要もなく、両手で力いっぱい押さえさせても、ピラミッドのように、私の手はビクともしません。そうでないと、腰から背中にかけての重さを指先にかけて、フォルテッシモの音量を出すことができません。)

 

最悪の場合、常に第三関節が落ち込んだままで弾く状態になります。そのような不合理な手は、かつてピアノ専攻学生の中にも見たことがあり、そんな不自由な手でよく入学できたものだと、その努力には感心させられましたが、これでは思い通りに音量や音色をコントロールして「いい演奏表現」をすることは不可能です。この異常事態を教師が放置すれば、もはやこの生徒の上達には、遠からず限界と挫折がやってきます。どうしても弾けない箇所が出てきて、壁に行き当たってしまうのです。

 

ある外来教師に「そんな手の学生がいたらどうしますか?」と尋ねると、「シカタナイ」といって直す気は全くありませんでした。(時間と労力がわずらわしいのでしょう。)しかし運動の原理から見てその原因を解明できる私は、短期間で直せますので、そのまま放置するとは、なんとかわいそうな事をするものだと思いました。

 

いかがでしたでしょうか、挫折に至るこのプロセス。「卵をつかんだ形」の弊害がいかに恐ろしいものか、ご理解いただければ幸いです。次回は最終回として、ショパンやリスト以後の重力奏法やロシア奏法で使われ、美しい音色で思い通りの演奏ができる、現代のピアノに合った「本当に正しい手の形」をご紹介します。 (2018.10  ピアノレッスンクリニック芦屋 田島孝一)

 

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