卵をつかんだ手の形の弊害・その4(最終回)

ピアノレッスンクリニック芦屋

090-4274-6607

〒659-0091 兵庫県芦屋市東山町28-19

レッスン時間/9時~20時ごろ 定休日/不定休

卵をつかんだ手の形の弊害・その4(最終回)

重力奏法(ロシア奏法)によるレッスン法・Tさんシリーズ,ピアノブログ

2018/11/12 卵をつかんだ手の形の弊害・その4(最終回)

「卵をつかんだ手の形」の弊害・その4(最終回)

~卵を「つかんだ」よりも「つかもうとする」手の形を~

 

前回まで、日本で今でも常識的に行われている、「卵をつかんだ形」でピアノを教え始めることの弊害について書いてきました。ではそれに代わる正しい手の形は何かをお伝えして、4回にわたるこの連載を終えることにします。

 

結論を先にお話すれば、卵を「つかんだ形」よりも「つかもうとする」手の形のほうが大事という事です。

この2つの手の形は、静止画では同じように見えるかもしれません。しかし、前者は固定的、後者は流動的という、大変大きな違いがあります。つまり前者は、常に卵を手の中に持ったままに近い、不自由で何か束縛された固定的な感覚が手全体にあります。それに対し後者は、これから卵をつかもうとする、次の動きへのより自由な即応力を常に備えているのです。

 

では皆さんに、<その1>でして頂いたことを、再び試していただきましょう。まず「卵をつかんだ」形を空中で作ってみてください。そしてその時の手の平の感覚を覚えておいてください。次に「卵をつかもうとする」手の形を同様に空中で作ってみてください。その時の手の平の感覚は、はたして前者の時と全く同じでしょうか?

微妙な、かすかな違いに思われるかもしれませんが、前者の手の平に感覚は感じられません。死んでいます。後者ではそれは生きています。いかがでしょうか。皆さんはこの違いを感じられましたでしょうか?

 

前回、第2関節を高くあげようと「指から動こうとする」ことが、一番困った事だと書きましたが、その理由をここでお話しておきます。

1つには、指を上げた瞬間、この大事な「つかむ感覚」が失われてしまいます。それによって音色が硬くなり、また微妙な演奏表現もできなくなってしまいます。2つ目に、「重力奏法」で最も大事な、肝心の「重さ」が使えなくなってしまい、指の力で鍵盤を「打つ」動きになってしまいます

 

私の講義中で、学生どうしそれを互いに観察させてチェックする目を養わせようとしましたが、ほとんどの学生は、どうしてもこの「指から動く」癖が抜けませんでした。長年鍛え上げた練習によって、反射的に指が動いてしまうのです。それほどこの困った手は、重篤な難病状態なのです。

 

さて、<その1>で私は、手の平でピアノを弾く(音色を作る)という話をしました。またそれを知らないピアノ教授と、知っているピアノ教授の話。それほどこの手の平の感覚は芸術的な演奏表現に絶対必要な感覚なのです。優れた演奏表現力を持ったピアニストは、演奏の生命線ともいえるこの触覚の感覚と、聴覚による音色や音量への反映の両方の感覚を、(おそらく多くの場合無意識的に)頼りながら演奏を紡いでいるのです。そのように演奏してこそ、はじめて聴く人の心を動かせる芸術的な演奏が可能になります。

 

ショパンはこの微妙な表現を徹底して追及したピアニストであり、その表現力を必要とする演奏力をピアニストに求めた最初の作曲家だといわれています。だからショパンの曲は最高難度にランクされているのです。多くの人々は、単に音型の困難さだけで最高難度と思われているようですが、真実はそれだけではないのです。

 

以上で4回にわたった「卵をつかんだ手の形」の弊害についての私のお話は終わりです。これまでの展開は、いかがでしたでしょうか。この最終回の展開、<手の形が音楽表現力を左右する>という結果までは、おそらく皆さんは考えておられなかったのではないでしょうか。


日本人ピアニストの多くに、このような芸術的名演奏が少ない大きな理由の一つが、どうやらこの辺りにあるように思われます
。(もう一つの理由は別の機会に書きます。)大事な手の形が、このような取り返しのつかない未来を作ってしまうのです。(ただし2つの形が作られる原因を知る当クリニックなら完治できます。)

改めて中村紘子氏の、「間違った手の使い方で教わったことへの無念さ」を感じて頂ければと思います。

 

2018.10 ピアノレッスンクリニック芦屋 田島孝一)

 

追記

書き終えた後に、まだ読んでいなかったセイモア・バーンスタイン著『ピアノ奏法20のポイント』を何気なく開いてみたら、何と私のDVDで(第3関節の力を育てるための)正しい形として説明している、(日本では悪い手の形とされている)「第3関節が高く保たれ、指をまっすぐ前に伸ばした手の形」とまったく同じ形の写真がありました。そして正しい姿勢の写真では、、指は当然ですが、反対側の手で脱力した手首を支えた時に現れる、ゆるやかに自然なカーブを描き、指先は斜め下向きに伸びていて、メトードローズやバイエルの手とは全く違っていました

本日、別ブログ「ロシア奏法によるレッスン法」の項目に、「『ロシア奏法』によるレッスンの威力とその見事な実証!!~初学者がたった5週間ですべての指から美しい均質な理想の音色が出せた!!」もアップしました。併せてご覧ください。

2018.11 ピアノレッスンクリニック芦屋 田島孝一)

 

 

ご自宅から安心してご参加いただけるオンライン無料体験会を開催中!!
詳細は、こちらをご覧ください。

 

■■□―――――――――――――――――――□■■

ピアノレッスンクリニック芦屋

【住所】
〒659-0091
兵庫県芦屋市東山町28-19

【電話番号】
0797-55-7077

【営業時間】
9時~20時ごろ

【定休日】
不定休

■■□―――――――――――――――――――□■■

TOP