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「重力奏法」(ロシア奏法)によるレッスンの威力とその実証 その2-2
~ブルグミュラー「素直な心」と「Bach平均律第1巻第1番(ハ長調)前奏曲」への挑戦の報告②’ ~
2.ショパン・メトードによる「重力奏法」のレッスン法
(Tさんへのこのレッスンは、ごく最近、1月末の20回目で始めたのですが、前段1.の練習法の延長上にあるため、先にここでご紹介しておきます。)
ここでの練習目的は、「重力奏法」(ロシア奏法)でも使っている、E~Hにわたる5度音程の、中3本の指で黒鍵を弾くことにより、重力奏法で必要とする理想的な手の形を身につけるための練習です。
この位置で3つの黒鍵を使う練習には、重要な意味があります。まず、なぜこのポジションなのか。その答えは、ショパン・メトードにあります。ショパンは音階の練習は「H-durから始めるべき」と言っています。そして1~5指が、このH-dur第4音EからHまでに並びます。このショパンの言葉を以前から知っていた私は、このポジションでの簡単な練習曲をいくつか作っていました。また『ピアノ奏法20のポイント』(セイモア・バーンスタイン著)にも、このポジションでの練習が使われていることを最近知りましたが、おそらく私と同じく、ショパン・メトードから着想されたのではないでしょうか。
では、なぜ最初期の学習にH-dur第4音Eからのポジションがいいのか。その理由には、大きく次の3つの事が考えられます。
⓵ 黒鍵を中3本の指で弾くこと
大前提として確認しておきたい事は、 (オクターブを除く) 音階では、原則として5つの黒鍵に1・5指は使わないという事です。つまり、黒鍵には必ず2・3・4指が使われるのです。黒鍵はより奥にあるため、それを弾くには指をピアノの奥へ伸ばさなければなりません。そうすると鍵盤に触れる部分は、爪に一番近い指先ではなく、「指の腹」つまり指紋のあるところで弾くことになります。(この点がハイフィンガー奏法とは全く異なります。)
② 長い中3本の指と両端の短い指の使い方が違うこと
これはハイフィンガー奏法にはない、また根本的できわめて重要なポイントです。それは「長い指は黒鍵上へ伸ばして鍵盤の奥で弾き、両端の短い1と5指は、それより手前の白鍵を弾いて手全体の重みを支える」という事です。これは実に理にかなった鍵盤上への指の配置を要求していると見受けられるのです。
③ 手全体を支えながらバランスを安定させるという、きわめて重要な働きをする両端の短い1指5指の使い方の練習が正しくできること
この2本は、手の両端にあるため、1本だけで手全体のバランスをとり、手の重さを支える事は、中3本の指より困難になります。しかし、特に1指は、次の手のポジションを決める重要なキーマンであり、そのポジションでの指が弾き易くなるよう、手のバランスを安定させる大変重要な役割を持っています。これが不安定だと、ミスを誘発させる原因になってしまいます。また5指は、上行形の音階やアルペジオの最終音をはっきり響かせる大変重要な指なので、強化し、安定して使えるようにしておく必要があります。そのためこの手のポジションで、両端の指を、他の指以上に堅固で安定した指に育てるためにも、ここでの練習は非常に重要な意味があると私は考えています。
なお、私がレッスンの最初からこのポジションで始めなかった大きな理由は、
などが主な理由です。
大変嬉しい出来事がありました。Tさんは年末にピアノを買われたのです! しかも、何とグランドピアノ!それに防音室! 実に教え甲斐のある理想的な生徒さんです!そしてレッスンの時には、少しの手の使い方の違いで大きく音色が変わる事に対して、たびたび「面白いですねぇ~」とおっしゃる。そのように楽しみながらTさんはこれまでの課題の練習と熱心な復習の努力を重ねられたのです。(Tさんはこの時まで、ピアノはお持ちではなかったので、机の上で指の感触を頼りにされての練習と、楽器店での時間貸し練習だけでした。)その熱意とご努力によって、前回にご報告したとおり、受講開始からたったの5週間という短期間で、見事に左右10指すべての指で、美しい音色を奏でられるようになられたのです。(ただし常に100%ではないので、その基礎練習は引き続き継続中。)
(途中で一時不都合な事も生じました。それは上記最初の練習曲を始められた時、紙鍵盤では手応えがなくて心もとないかもと、電子キーボードをお貸ししたところ、次週来られた時には、驚くほど音色と手の使い方がおかしくなってしまったのです。これを修正するため、再び机の上での練習に戻って頂いたところ、効果てきめん! すぐに元の音色を取り戻されました。このことから「指先による手応えの感覚を一つずつ確かめながら練習する」ことの重要さと共に、その絶大な効果を再確認し、安価なキーボードでこれら「重力奏法」や「指歩きピアノ奏法」を習得するのは、これほど困難なことなのだと改めて痛感させられました。)
3.第1関節の感覚と「支え」の働きを目覚めさせる
11月頃に次の段階の練習に入りました。それは、第3関節の働きと同じく重要な、第1関節を活用できるようにすることです。私の学生時代から約10年間、重力奏法で教えて頂いた江藤支那子先生は、私の2の指の第1関節を曲げさせ、そこを先生が爪先ではじきながら、「起きなさいよ~と言って目を覚ましてあげましょう。」と言われました。きっと刺激を与えて、そこの感覚を目覚めさせるためにされたのでしょう。
とにかく何らかの方法で、ピアノを弾く時には、多くの場合は意識しては使わない第1関節の感覚を目覚めさせ、それを自在に使えるようにしなければなりません。この働きがある事で、手の動きは更に細やかとなり、繊細な音色にもつなげる事ができるようになるからです。(多彩な音色の変化と表現で人々を魅了した往年の名ピアニスト・ホロヴィッツは、この第1関節だけを曲げた「マムシ指」を使う事で有名でした。)
私のレッスンでは、その目的のために3つの方法を使います。一つ目は第1関節をピアノの上蓋(鍵盤の蓋ではない)または机の上端に引っ掛け、力を入れてその関節の力を目覚めさせ成長させること。(②で紹介したS・バーンスタインの本では、先生が持った鉛筆を、子どもの各指の第1関節を曲げて引っ張らせています。)それとあと2つ、独自のとっておきの方法があります。一つはどのご家庭にもある生活用品の「あるもの」を使ってそれをつかむ練習。それともう一つは特殊なヒミツ兵器を使って、各指の第1関節の働きを、私の「指歩きピアノ奏法®」を使って成長させるレッスンを行っています。これ以上のタネアカシは、ここでは企業ヒミツとして伏せておきます。要するに、第1関節を使えるようにすることが、ピアノを表現力豊かに弾く上で、非常に重要な事なのです。
(2019.2.3 ピアノレッスンクリニック芦屋 田島孝一)
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~ブルグミュラー「素直な心」と「Bach平均律第1巻第1番(ハ長調)前奏曲」への挑戦の報告②’ ~
2.ショパン・メトードによる「重力奏法」のレッスン法
(Tさんへのこのレッスンは、ごく最近、1月末の20回目で始めたのですが、前段1.の練習法の延長上にあるため、先にここでご紹介しておきます。)
ここでの練習目的は、「重力奏法」(ロシア奏法)でも使っている、E~Hにわたる5度音程の、中3本の指で黒鍵を弾くことにより、重力奏法で必要とする理想的な手の形を身につけるための練習です。
この位置で3つの黒鍵を使う練習には、重要な意味があります。まず、なぜこのポジションなのか。その答えは、ショパン・メトードにあります。ショパンは音階の練習は「H-durから始めるべき」と言っています。そして1~5指が、このH-dur第4音EからHまでに並びます。このショパンの言葉を以前から知っていた私は、このポジションでの簡単な練習曲をいくつか作っていました。また『ピアノ奏法20のポイント』(セイモア・バーンスタイン著)にも、このポジションでの練習が使われていることを最近知りましたが、おそらく私と同じく、ショパン・メトードから着想されたのではないでしょうか。
では、なぜ最初期の学習にH-dur第4音Eからのポジションがいいのか。その理由には、大きく次の3つの事が考えられます。
⓵ 黒鍵を中3本の指で弾くこと
大前提として確認しておきたい事は、 (オクターブを除く) 音階では、原則として5つの黒鍵に1・5指は使わないという事です。つまり、黒鍵には必ず2・3・4指が使われるのです。黒鍵はより奥にあるため、それを弾くには指をピアノの奥へ伸ばさなければなりません。そうすると鍵盤に触れる部分は、爪に一番近い指先ではなく、「指の腹」つまり指紋のあるところで弾くことになります。(この点がハイフィンガー奏法とは全く異なります。)
② 長い中3本の指と両端の短い指の使い方が違うこと
これはハイフィンガー奏法にはない、また根本的できわめて重要なポイントです。それは「長い指は黒鍵上へ伸ばして鍵盤の奥で弾き、両端の短い1と5指は、それより手前の白鍵を弾いて手全体の重みを支える」という事です。これは実に理にかなった鍵盤上への指の配置を要求していると見受けられるのです。
③ 手全体を支えながらバランスを安定させるという、きわめて重要な働きをする両端の短い1指5指の使い方の練習が正しくできること
この2本は、手の両端にあるため、1本だけで手全体のバランスをとり、手の重さを支える事は、中3本の指より困難になります。しかし、特に1指は、次の手のポジションを決める重要なキーマンであり、そのポジションでの指が弾き易くなるよう、手のバランスを安定させる大変重要な役割を持っています。これが不安定だと、ミスを誘発させる原因になってしまいます。また5指は、上行形の音階やアルペジオの最終音をはっきり響かせる大変重要な指なので、強化し、安定して使えるようにしておく必要があります。そのためこの手のポジションで、両端の指を、他の指以上に堅固で安定した指に育てるためにも、ここでの練習は非常に重要な意味があると私は考えています。
なお、私がレッスンの最初からこのポジションで始めなかった大きな理由は、
などが主な理由です。
大変嬉しい出来事がありました。Tさんは年末にピアノを買われたのです! しかも、何とグランドピアノ!それに防音室! 実に教え甲斐のある理想的な生徒さんです!そしてレッスンの時には、少しの手の使い方の違いで大きく音色が変わる事に対して、たびたび「面白いですねぇ~」とおっしゃる。そのように楽しみながらTさんはこれまでの課題の練習と熱心な復習の努力を重ねられたのです。(Tさんはこの時まで、ピアノはお持ちではなかったので、机の上で指の感触を頼りにされての練習と、楽器店での時間貸し練習だけでした。)その熱意とご努力によって、前回にご報告したとおり、受講開始からたったの5週間という短期間で、見事に左右10指すべての指で、美しい音色を奏でられるようになられたのです。(ただし常に100%ではないので、その基礎練習は引き続き継続中。)
(途中で一時不都合な事も生じました。それは上記最初の練習曲を始められた時、紙鍵盤では手応えがなくて心もとないかもと、電子キーボードをお貸ししたところ、次週来られた時には、驚くほど音色と手の使い方がおかしくなってしまったのです。これを修正するため、再び机の上での練習に戻って頂いたところ、効果てきめん! すぐに元の音色を取り戻されました。このことから「指先による手応えの感覚を一つずつ確かめながら練習する」ことの重要さと共に、その絶大な効果を再確認し、安価なキーボードでこれら「重力奏法」や「指歩きピアノ奏法」を習得するのは、これほど困難なことなのだと改めて痛感させられました。)
3.第1関節の感覚と「支え」の働きを目覚めさせる
11月頃に次の段階の練習に入りました。それは、第3関節の働きと同じく重要な、第1関節を活用できるようにすることです。私の学生時代から約10年間、重力奏法で教えて頂いた江藤支那子先生は、私の2の指の第1関節を曲げさせ、そこを先生が爪先ではじきながら、「起きなさいよ~と言って目を覚ましてあげましょう。」と言われました。きっと刺激を与えて、そこの感覚を目覚めさせるためにされたのでしょう。
とにかく何らかの方法で、ピアノを弾く時には、多くの場合は意識しては使わない第1関節の感覚を目覚めさせ、それを自在に使えるようにしなければなりません。この働きがある事で、手の動きは更に細やかとなり、繊細な音色にもつなげる事ができるようになるからです。(多彩な音色の変化と表現で人々を魅了した往年の名ピアニスト・ホロヴィッツは、この第1関節だけを曲げた「マムシ指」を使う事で有名でした。)
私のレッスンでは、その目的のために3つの方法を使います。一つ目は第1関節をピアノの上蓋(鍵盤の蓋ではない)または机の上端に引っ掛け、力を入れてその関節の力を目覚めさせ成長させること。(②で紹介したS・バーンスタインの本では、先生が持った鉛筆を、子どもの各指の第1関節を曲げて引っ張らせています。)それとあと2つ、独自のとっておきの方法があります。一つはどのご家庭にもある生活用品の「あるもの」を使ってそれをつかむ練習。それともう一つは特殊なヒミツ兵器を使って、各指の第1関節の働きを、私の「指歩きピアノ奏法®」を使って成長させるレッスンを行っています。これ以上のタネアカシは、ここでは企業ヒミツとして伏せておきます。要するに、第1関節を使えるようにすることが、ピアノを表現力豊かに弾く上で、非常に重要な事なのです。
(2019.2.3 ピアノレッスンクリニック芦屋 田島孝一)
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