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〒659-0091 兵庫県芦屋市東山町28-19
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その3 Tさん 初めて曲を弾く ブルグミュラー第1番「素直な心」への挑戦①
9月からピアノを始められた初学者で壮年のTさん。この重力奏法シリーズの第1報に書いたように、わずか5週目には「指歩きピアノ奏法」と「重力奏法」の併用で、両手全10指から美しい音色を奏でることに成功し、しかも美しいレガートによる順次進行を見事に獲得されました。その時の予告どおり、6週目からブルグミュラー「素直な心」の練習が始まりました。その次の予定曲②はバッハの名曲平均律1番ハ長調の前奏曲です。この美しい2曲を美しい音色で弾く事によって、それらを楽しみながら「重力奏法」(ロシア奏法)、そして私の考案した「指歩きピアノ奏法®」をさらに学んでいただこうと考えました。
まずブルグミュラー25の練習曲第1番「素直な心」。この選曲理由は、もちろんメロディーのほとんどが、これまで練習してきた全5指による順次進行だからです。
左右10本の指ですべて美しい音色が出せるという、ピアノを弾くための理想的な指。確実に鍵盤を鳴らせるよう成長を進めて来られた手を、ただこれまで通りに動かすだけで、初学者Tさんにも必ず出来ると確信しています。あとは楽譜が読めて、手を置く場所さえわかればいいのですから。今回はこの曲を始めて約2ヶ月半後、1月末での現状報告です。
私が設定したこの曲の練習課題1~12とその練習ポイント、およびTさんの習得状況を、以下に記します。
1.指の感触と美しい音色を確認しながら順次進行をレガートで弾くことの復習
これは最重要の練習目的です。順次進行の1音を抜かして、これまで通りに弾けばいいだけなので、全く問題なし。
2.右手2点Cのポジション、ド~ソの読譜練習
・ドミソ(CEG)の音を読み、135指を置けばそのポジションで簡単に弾けます。
ここで重要なのは、1音ずつ探さずに、1~5指の指が既にそこにある状態になっていると意識する事なのです。
3.3点ハまで1オクターブ手の拡張と、2点ファのポジションでの読譜練習
・大事な点は、必ず1指を残したまま手を広げること。1指が基準になるようにすると、手が1オクターブの広がりを覚え
てくれます。もし1指を広げないまま手を運べば、基準点を失って手の行き先を見失ってしまい、ミスになり易くなり
ます。
・あとは上記2の要領で、高いファラド(FAC)に指を置けばいいだけ。
・1指ファを弾いた直後、隣のソに5指を素早く手を縮めて運ぶ。
・1指をやや立てて、手の重さを確実に支えている事が重要ポイント
・Dの3和音を押さえてから1指を2音拡張すればいい。
・D7→Gはパターンとして教える。Gの時も5指はレにとどまっている事。(Gの和音の第2転回形。)
・左右対称で同じ指で弾くとわかれば簡単に指が動く
・1つ目の3指ドは1指でミを弾くため。2つ目のドを2にするのは、5指ソのポジションに戻すため。
・ヘ音記号第4間ソとト音記号加線下ソが同じ場所であることを分からせれば、あとは1指を1音広げるだけなので、安心して弾ける。
・ソ→#ファ→ラのメロディーラインを大切に、やや強めに指を立てしっかりもたれる。この時、鍵盤を押さえつけてはいけない。返って指が離れる原因になります。
押さえつけなくても、ただ楽にもたれているだけほうが、鍵盤は上がってきません。到着点ラにはsfがあるのでそこへ向かって重さを徐々に増してcresc.する。
14. 次のポジションを前もって準備する練習。特に休符の間に次を準備する練習。
・特に反復記号前の4分休符の後。手を広げて届く音は極力触っておいてから弾く。
15. 曲としての強弱・cresc.など音量増減やテンポの変化を「重さのコントロール」で表現する
16.順次進行を、これまでより早めの速度で安定して弾くための方法を身につける
このように、大量の学習課題が含まれています。
12月末に1曲目は終わり近くまで、上記練習課題15までこなされました。あとは仕上げに、16の少し速めて、しかも美しい音色で弾くための、特別なレッスン法でお教えするだけです。
この曲が1ページ目反復記号までなんとか弾けた3週目(9月からだと8週目の10月末)頃から、次の曲である「Bach平均律第1巻前奏曲」の準備に入りました。それはまた次回に。
❀コラム
プロ・ピアニストが使うミスを防ぐ最善策
安定して弾くための最も大事なポイントは、不用意に手をピアノから離さない事。上記3で書いたように、基準点を見失って行先の音をミスする確率が高くなってしまいます。極力次の音を触っておいてから弾く事がミスを防ぐ最も確実な安全対策です。名のあるプロ・ピアニストは、みんなそうしてミスを防ぎ、それをしないアマチュアがミスを繰り返すのです。馬鹿げていますね。
読譜練習のコツ
広く行われている学習法は、中央ドから1音ずつドレミ~と学びます。これだと、学校など多くの場合(中にはピアノ教室でも)、学習者はドから順に数えていって目的の音の名前をやっと知ることになり、時間がかかって実用にはなりません。(学校で習っても身に付きにくいのは、そのせいかもしれませんね。。)
またピアノ教室などで使われる「音符カード」は、別ブログに書いたとおりの弊害があります。(個別に覚えさせられるので、絶えず復習し続けないとすぐに忘れてしまいます。一番困った大問題となるのは、楽譜を単に音符の羅列として読んでしまう弊害です。カタカナの文章を1字ずつ読んでも、何が書かれていたのか、文の意味を把握しないまま、読むだけ読んだ、で終わってしまいます。これが多くの子供たちに見られる演奏のつまらなさにつながっているのです。恐ろしいことに、そのクセはプロ・ピアニストにまで残って、「語りかけ」のないつまらない演奏にしてしまうことさえあるのです。)
私の教え方は、ドミソ(CEG)のたった3音だけ覚えさせます。あとの4音レファラシは、ドミソの隣なので、最初のドから数える必要はありません。その4音は3つの基準音からすぐ隣なので、歌っているうちに、スラスラ出てくるようになるはずです。(必ず声に出すことが重要です。)
右手ト音記号だと、最初に中央のドミソ。次の位置は高いドミソと上第2線のド。左手ヘ音記号では、右手と同じ中央のド。第2間からドミソ。あとは第1線のソと下第2線のド。これだけのドミソの位置を覚えてしまえば、初級レベルの多くの曲の読譜を容易にすることができます。
この2本線のドは、右手の上第2線、つまり上に書き足した2本線のドと同じ形をしています。子どもにテキストをひっくり返して見せて「ほら、同じでしょう。おもしろいね。」といって印象深く記憶させます。さらに、ここに挙げたドミソ全部には、一つずつ特徴を表した個別の名前をつけて、キャラクター性を持たせ、印象深く覚えるようにしています。(団子のド、一本線のミなど)
このことを、ひらがなを覚える時の状態に当てはめてみましょう。子供たちが字を覚えるために使っているカルタや積み木などには絵があり、「犬のい」など文字にイメージが伴って、覚えやすくしてあります。私は音符を覚えるのも、これと同じ方式でするべきだと考えています。具体的には、同じ音型のかたまりとして読むのです(例:ドミレド・ミソファミ・ラドシラなど)。「素直な心」でも、ソミレドと同じ音型で、ドラソファなどのメロディ・パターンが、繰りかえし出てきます。こうすれば、単語のように一つの音型として、メロディーのかたまりが単語のように、記憶に残ります。こうして身に付いた読譜力こそ、個々の音符の名前の羅列でない、音楽のかたまり、単語、またフレーズとして「音楽を読む」力、本当の読譜力が育っていき、「語りかけるような演奏」につながっていくのではないでしょうか。
英語耳と音楽耳
子どもへのレッスンとTさんへのレッスン法の違う点は、Tさんは音楽がお好きで、これまでたくさんの曲をよく聴いて来られているので、音楽の良さや楽しさを既に知っておられることです。英語に例えれば、英語耳のようなものがすでにできておられるのです。そのため、子どもよりも課題の理解がはるかに速いし深いのが当たり前なので、教える側としては大変ありがたい点です。もし生徒が子どもであっても、Tさんと同じようにたくさんの音楽を聞いて育っていれば、音楽への豊かな感性を持った「音楽耳」が育っているはずなので、それだけ上達が速くなるのは当然だと言えるでしょう。親が作る家庭環境の大切さですね。ぜひお子さんと共にピアノを喜び、共に音楽を聴いて、共に楽しんであげて下さい。
(2019.2.15 ピアノレッスンクリニック芦屋 田島孝一)
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ピアノレッスンクリニック芦屋
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9月からピアノを始められた初学者で壮年のTさん。この重力奏法シリーズの第1報に書いたように、わずか5週目には「指歩きピアノ奏法」と「重力奏法」の併用で、両手全10指から美しい音色を奏でることに成功し、しかも美しいレガートによる順次進行を見事に獲得されました。その時の予告どおり、6週目からブルグミュラー「素直な心」の練習が始まりました。その次の予定曲②はバッハの名曲平均律1番ハ長調の前奏曲です。この美しい2曲を美しい音色で弾く事によって、それらを楽しみながら「重力奏法」(ロシア奏法)、そして私の考案した「指歩きピアノ奏法®」をさらに学んでいただこうと考えました。
まずブルグミュラー25の練習曲第1番「素直な心」。この選曲理由は、もちろんメロディーのほとんどが、これまで練習してきた全5指による順次進行だからです。
左右10本の指ですべて美しい音色が出せるという、ピアノを弾くための理想的な指。確実に鍵盤を鳴らせるよう成長を進めて来られた手を、ただこれまで通りに動かすだけで、初学者Tさんにも必ず出来ると確信しています。あとは楽譜が読めて、手を置く場所さえわかればいいのですから。今回はこの曲を始めて約2ヶ月半後、1月末での現状報告です。
私が設定したこの曲の練習課題1~12とその練習ポイント、およびTさんの習得状況を、以下に記します。
1.指の感触と美しい音色を確認しながら順次進行をレガートで弾くことの復習
これは最重要の練習目的です。順次進行の1音を抜かして、これまで通りに弾けばいいだけなので、全く問題なし。
2.右手2点Cのポジション、ド~ソの読譜練習
・ドミソ(CEG)の音を読み、135指を置けばそのポジションで簡単に弾けます。
ここで重要なのは、1音ずつ探さずに、1~5指の指が既にそこにある状態になっていると意識する事なのです。
3.3点ハまで1オクターブ手の拡張と、2点ファのポジションでの読譜練習
・大事な点は、必ず1指を残したまま手を広げること。1指が基準になるようにすると、手が1オクターブの広がりを覚え
てくれます。もし1指を広げないまま手を運べば、基準点を失って手の行き先を見失ってしまい、ミスになり易くなり
ます。
・あとは上記2の要領で、高いファラド(FAC)に指を置けばいいだけ。
・1指ファを弾いた直後、隣のソに5指を素早く手を縮めて運ぶ。
・1指をやや立てて、手の重さを確実に支えている事が重要ポイント
・Dの3和音を押さえてから1指を2音拡張すればいい。
・D7→Gはパターンとして教える。Gの時も5指はレにとどまっている事。(Gの和音の第2転回形。)
・左右対称で同じ指で弾くとわかれば簡単に指が動く
・1つ目の3指ドは1指でミを弾くため。2つ目のドを2にするのは、5指ソのポジションに戻すため。
・ヘ音記号第4間ソとト音記号加線下ソが同じ場所であることを分からせれば、あとは1指を1音広げるだけなので、安心して弾ける。
・ソ→#ファ→ラのメロディーラインを大切に、やや強めに指を立てしっかりもたれる。この時、鍵盤を押さえつけてはいけない。返って指が離れる原因になります。
押さえつけなくても、ただ楽にもたれているだけほうが、鍵盤は上がってきません。到着点ラにはsfがあるのでそこへ向かって重さを徐々に増してcresc.する。
14. 次のポジションを前もって準備する練習。特に休符の間に次を準備する練習。
・特に反復記号前の4分休符の後。手を広げて届く音は極力触っておいてから弾く。
15. 曲としての強弱・cresc.など音量増減やテンポの変化を「重さのコントロール」で表現する
16.順次進行を、これまでより早めの速度で安定して弾くための方法を身につける
このように、大量の学習課題が含まれています。
12月末に1曲目は終わり近くまで、上記練習課題15までこなされました。あとは仕上げに、16の少し速めて、しかも美しい音色で弾くための、特別なレッスン法でお教えするだけです。
この曲が1ページ目反復記号までなんとか弾けた3週目(9月からだと8週目の10月末)頃から、次の曲である「Bach平均律第1巻前奏曲」の準備に入りました。それはまた次回に。
❀コラム
プロ・ピアニストが使うミスを防ぐ最善策
安定して弾くための最も大事なポイントは、不用意に手をピアノから離さない事。上記3で書いたように、基準点を見失って行先の音をミスする確率が高くなってしまいます。極力次の音を触っておいてから弾く事がミスを防ぐ最も確実な安全対策です。名のあるプロ・ピアニストは、みんなそうしてミスを防ぎ、それをしないアマチュアがミスを繰り返すのです。馬鹿げていますね。
❀コラム
読譜練習のコツ
広く行われている学習法は、中央ドから1音ずつドレミ~と学びます。これだと、学校など多くの場合(中にはピアノ教室でも)、学習者はドから順に数えていって目的の音の名前をやっと知ることになり、時間がかかって実用にはなりません。(学校で習っても身に付きにくいのは、そのせいかもしれませんね。。)
またピアノ教室などで使われる「音符カード」は、別ブログに書いたとおりの弊害があります。(個別に覚えさせられるので、絶えず復習し続けないとすぐに忘れてしまいます。一番困った大問題となるのは、楽譜を単に音符の羅列として読んでしまう弊害です。カタカナの文章を1字ずつ読んでも、何が書かれていたのか、文の意味を把握しないまま、読むだけ読んだ、で終わってしまいます。これが多くの子供たちに見られる演奏のつまらなさにつながっているのです。恐ろしいことに、そのクセはプロ・ピアニストにまで残って、「語りかけ」のないつまらない演奏にしてしまうことさえあるのです。)
私の教え方は、ドミソ(CEG)のたった3音だけ覚えさせます。あとの4音レファラシは、ドミソの隣なので、最初のドから数える必要はありません。その4音は3つの基準音からすぐ隣なので、歌っているうちに、スラスラ出てくるようになるはずです。(必ず声に出すことが重要です。)
右手ト音記号だと、最初に中央のドミソ。次の位置は高いドミソと上第2線のド。左手ヘ音記号では、右手と同じ中央のド。第2間からドミソ。あとは第1線のソと下第2線のド。これだけのドミソの位置を覚えてしまえば、初級レベルの多くの曲の読譜を容易にすることができます。
この2本線のドは、右手の上第2線、つまり上に書き足した2本線のドと同じ形をしています。子どもにテキストをひっくり返して見せて「ほら、同じでしょう。おもしろいね。」といって印象深く記憶させます。さらに、ここに挙げたドミソ全部には、一つずつ特徴を表した個別の名前をつけて、キャラクター性を持たせ、印象深く覚えるようにしています。(団子のド、一本線のミなど)
このことを、ひらがなを覚える時の状態に当てはめてみましょう。子供たちが字を覚えるために使っているカルタや積み木などには絵があり、「犬のい」など文字にイメージが伴って、覚えやすくしてあります。私は音符を覚えるのも、これと同じ方式でするべきだと考えています。具体的には、同じ音型のかたまりとして読むのです(例:ドミレド・ミソファミ・ラドシラなど)。「素直な心」でも、ソミレドと同じ音型で、ドラソファなどのメロディ・パターンが、繰りかえし出てきます。こうすれば、単語のように一つの音型として、メロディーのかたまりが単語のように、記憶に残ります。こうして身に付いた読譜力こそ、個々の音符の名前の羅列でない、音楽のかたまり、単語、またフレーズとして「音楽を読む」力、本当の読譜力が育っていき、「語りかけるような演奏」につながっていくのではないでしょうか。
❀コラム
英語耳と音楽耳
子どもへのレッスンとTさんへのレッスン法の違う点は、Tさんは音楽がお好きで、これまでたくさんの曲をよく聴いて来られているので、音楽の良さや楽しさを既に知っておられることです。英語に例えれば、英語耳のようなものがすでにできておられるのです。そのため、子どもよりも課題の理解がはるかに速いし深いのが当たり前なので、教える側としては大変ありがたい点です。もし生徒が子どもであっても、Tさんと同じようにたくさんの音楽を聞いて育っていれば、音楽への豊かな感性を持った「音楽耳」が育っているはずなので、それだけ上達が速くなるのは当然だと言えるでしょう。親が作る家庭環境の大切さですね。ぜひお子さんと共にピアノを喜び、共に音楽を聴いて、共に楽しんであげて下さい。
(2019.2.15 ピアノレッスンクリニック芦屋 田島孝一)
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