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その7 初学者Tさん曲への挑戦⑤「上拍を感じる」 初心者がよく陥る速さのムラとその治し方
~「素直な心」と「平均律1番ハ長調前奏曲」を通じて⑤~
初学者Tさんのレッスンも24週目。9月にピアノを始められてから、2月末でちょうど6ケ月が経ちました。
曲を弾くのが面白くなり、テンポを速めて弾けるようになられたのはいいのですが、時々速さにムラが現れてしまいました。ある所で突然走り出すのです。
でもこれは、音楽好きな初心者によく現れる症状です。
この症状の主な原因は、
(それまでのメロディーの♫の速さと、ある所からの♫の速さが一致しない)
この2つがあげられます。
今回は、その直し方を2つご紹介したいと思います。
まず最も簡単な一つ目の方法は、そのメロディーを口ずさみながら1拍ずつ手を打ちながら歩く事です。
ラララでもいいですが、ドレミで歌うほうが、ソルフェージュ(音感の基礎訓練)としてより役立ちます。
もし歩くのが急に速くなればすぐわかりますが、そうなる前に、速く歩くこと自体まず起きないでしょう。
こうすることで、そのメロディー本来の正しいリズムや速さ、曲全体の正しい速度が、把握できていきます。
これは自分の身体がメトロノームの役割を果たすことになり、等拍の感覚を身に付ける重要な練習になります。
二つ目の方法は、「上拍」(またはアウフタクト)と呼ばれる、音楽上とても重要な要素を感じ取ることで、拍の間隔を均等に感じると共に、より音楽的感覚まで磨くことまでできるようになる、最良の方法です。
それは1拍ずつ手を上下に打ちながら、(歩かずに)同じくメロディーを歌う方法です。
この時、トランポリンで跳躍した時のように、手がジャンプして上に上がった手が下がる直前に、一瞬静止してフワッとなる瞬間があります。
そこが上拍と呼ばれる、音楽上非常に重要な瞬間の一点です。
トランポリンでは、この一瞬に空中での回転運動が始まりますが、上拍とはまさにその動きが始まる瞬間なのです。
これを感じ取れるか否かは、「音楽をより動きのあるものとして感じとれるか否か」に関連してくる、とても重要な感覚なのです。
この「音楽の動き」を、言葉に置き換えてみると、「冠詞+単語」の関係にも似ています。
一例をあげれば、the book のような形です。theが上拍で弱拍、そしてbookが強拍です。
冠詞のtheは、強拍のbookへなだれ込むように、一続きの言葉のかたまりになります。
これがヨーロッパ言語に基づいた、西洋音楽のとても重要な特徴なのです。
これを日本人がカタカナ英語で「ザ・ブック」と(時には3音節で)読んでしまうと、各拍は均等化されてしまい、
上拍の貴重な特徴が失われ、西洋音楽独特の音の流れが途絶えてしまうのです。
このきわめて重要な西洋音楽の特性を、音楽大学でも教わることは極めて稀なのではないでしょうか。
そもそも、「日本語とヨーロッパ言語の違いが、音楽の上に必然的に反映されている」などと講義で教わることはまずないでしょう。
せいぜい指揮科の学生くらいかも知れません。ピアノレッスンで教わることは、ほとんどないと思われます。
ですから、学校で音楽の先生から教わることなどありえません。
指揮法では曲の始めに「予備」と呼ばれる動きを示しますが、それは4拍子なら1拍目直前の4拍目を示す動きのことです。
この予備の一振りで、これから始まる曲の速度や強弱などをオーケストラに伝えることができます。
音楽にもよりますが、次の1拍目がどっしりとした強拍の重さを感じさせることができるのです。
つまり強拍とは、弱拍の上拍から下に向かって動きはじめ、加速しながら重く降りて行き、
次に急反転して上へとジャンプする瞬間の一点。跳ね上がって、減速しながら上で一瞬止まって反転する瞬間が、軽さを伴った上拍なのです。
この重い・軽いのリズムが反復しながら西洋音楽は前進して行きます。
これは1拍の8分音符♫2つの相互関係の中でさえも、この軽重が微妙に内包されていることが多いのです。
(この重い・軽いのリズムは、日本のスローテンポの雅楽や舞楽の中にさえ見られる、重要な音楽要素であり、雅楽の魅力要素の一つなのです。
これを私は、学生たちへの講義の中で、次のように説明してきました。
「その指揮棒や舞楽の舞の手の先に自分が乗っているとすれば、まるでジェットコースターの先頭に乗っているようなスピード感を感じることができる」と。)
もしこれを正しく感じながら、トランポリン上で跳躍している気分で上下に手を打ちながら歌えれば、決して速くなっていくことはありません。
Tさんは今日もまた一つ、音楽のとても重要な感覚を理解されました。
もちろん能力として身に染み込むまでには、一朝一夕にというわけには参りませんが。
なお、このようにきわめて音楽的な内容であり、また重要な音楽の感性に関わる内容ではあっても、
ほとんどの人は、それに触れて学ぶ機会に出会うことは、まずないでしょう。
ついでに、外国の人たちが「ワタシタチハ」と太字にアクセントを付けて話すのは、
ワを冠詞や前置詞的に感じ、太字で強拍や1拍目として感じているからなのです。
そういう言語習慣・クセがついているのです。
これが間違いなく、西洋音楽の土台にあるのです。
こんな基本的で重要なことさえも、授業や講義で聞かれることは、ほとんどないのではないでしょうか。
最後にとても重要な事を付け足します。
決してメトロノームに合わせてピアノを弾いてはいけません。
こう聞くと「ええっ?」と驚かれる方が多いかも知れませんね。これまでレッスンで、そのようにして教わってこられた生徒さんは、非常に多いと思います。
では、なぜそれが良くないのか。
そもそもテンポ・速度は、自分の感覚でコントロールするべきものなのです。
今回はじめに挙げた、1つ目の方法で、「自分の身体がメトロノームの役割を果たす」と書きましたが、それと共通する事なのです。
ところがメトロノームの音に合わせてピアノを弾いていると、機械の音に合わせることが目的になり、
主体的な自分の感覚として身につくまで、かなりの時間がかかってしまい、習得効率がとても悪いのです。
もっと悪いことに、機械の音に合わせようと真剣になればなるほど、
その音楽が持っている美しさやイメージが意識から消えてしまうという、
音楽表現上不都合な、とても恐ろしい事が起こりやすくなってしまうのです。
では、メトロノームはいったい何のために存在するのでしょうか。
その答えは、一つにはその曲で指定されたメトロノーム記号の速さや、アダージョやアレグロなどの「相対的な速度」を確かめるため。
そしてもう一つは、等間隔のビート感覚を養うため。
主にこの2つのために、メトロノームは使われるべきなのです。
特に重要な後者の使い方は、
もし手拍子を打った瞬間に、メトロノームの音が一瞬消えて聞こえなくなれば、それはめでたく人と機械の音が一致した瞬間。
メトロノームの速度を正しく捕まえられた瞬間なのです。
これはオーケストラの速度を牽引する、打楽器奏者のトレーニング法だそうですが、
これを遊び感覚でしているうちに、その人の均等なビート感覚が養われていくのです。
ぜひ皆さん、この遊びを通じて、あなたの拍感覚を磨いていってください。
さてあなたは、この無音状態を2つ以上連続させることができるでしょうか。
最後に、メトロノームに合わせる効果を重視される先生方の異論に対して少し補足しておきます。
例えばツェルニーなどの練習曲で、速い速度を維持しなければならない時には、
その出来具合をチェックする目的で、あくまでも補助的に、メトロノームに合わせて「試しに弾いてみる」程度にとどめるべきでしょう。
その場合でも、速度感覚を養う事のほうが大切なので、
メトロノームを使っての練習は、ピアノを弾かずに、機械の音に合わせてタカタカなどで(できれば音楽的に)歌う方法を勧めます。
あくまでも練習時に使用する目的は、前記したように、大事な音楽の感性を損なわないよう、速度感覚を養うためだけにとどめたいものです。
ツェルニーにだって音楽的要素はそれなりに存在し、その音楽を楽しみながら弾くこともできるのですから。
練習曲の仕上げに、メトロノームに合わせて弾く使い方では、指の訓練で終わってしまい、
「音楽の大事なもの」が抜け落ちてしまいます。
そんな演奏をするピアニストが日本にあふれている原因の一つは、こんな所にもあるのではないでしょうか。
(2019.3.19 ピアノレッスンクリニック芦屋 田島孝一)
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~「素直な心」と「平均律1番ハ長調前奏曲」を通じて⑤~
初学者Tさんのレッスンも24週目。9月にピアノを始められてから、2月末でちょうど6ケ月が経ちました。
曲を弾くのが面白くなり、テンポを速めて弾けるようになられたのはいいのですが、時々速さにムラが現れてしまいました。ある所で突然走り出すのです。
でもこれは、音楽好きな初心者によく現れる症状です。
この症状の主な原因は、
(それまでのメロディーの♫の速さと、ある所からの♫の速さが一致しない)
この2つがあげられます。
今回は、その直し方を2つご紹介したいと思います。
まず最も簡単な一つ目の方法は、そのメロディーを口ずさみながら1拍ずつ手を打ちながら歩く事です。
ラララでもいいですが、ドレミで歌うほうが、ソルフェージュ(音感の基礎訓練)としてより役立ちます。
もし歩くのが急に速くなればすぐわかりますが、そうなる前に、速く歩くこと自体まず起きないでしょう。
こうすることで、そのメロディー本来の正しいリズムや速さ、曲全体の正しい速度が、把握できていきます。
これは自分の身体がメトロノームの役割を果たすことになり、等拍の感覚を身に付ける重要な練習になります。
二つ目の方法は、「上拍」(またはアウフタクト)と呼ばれる、音楽上とても重要な要素を感じ取ることで、拍の間隔を均等に感じると共に、より音楽的感覚まで磨くことまでできるようになる、最良の方法です。
それは1拍ずつ手を上下に打ちながら、(歩かずに)同じくメロディーを歌う方法です。
この時、トランポリンで跳躍した時のように、手がジャンプして上に上がった手が下がる直前に、一瞬静止してフワッとなる瞬間があります。
そこが上拍と呼ばれる、音楽上非常に重要な瞬間の一点です。
トランポリンでは、この一瞬に空中での回転運動が始まりますが、上拍とはまさにその動きが始まる瞬間なのです。
これを感じ取れるか否かは、「音楽をより動きのあるものとして感じとれるか否か」に関連してくる、とても重要な感覚なのです。
この「音楽の動き」を、言葉に置き換えてみると、「冠詞+単語」の関係にも似ています。
一例をあげれば、the book のような形です。theが上拍で弱拍、そしてbookが強拍です。
冠詞のtheは、強拍のbookへなだれ込むように、一続きの言葉のかたまりになります。
これがヨーロッパ言語に基づいた、西洋音楽のとても重要な特徴なのです。
これを日本人がカタカナ英語で「ザ・ブック」と(時には3音節で)読んでしまうと、各拍は均等化されてしまい、
上拍の貴重な特徴が失われ、西洋音楽独特の音の流れが途絶えてしまうのです。
このきわめて重要な西洋音楽の特性を、音楽大学でも教わることは極めて稀なのではないでしょうか。
そもそも、「日本語とヨーロッパ言語の違いが、音楽の上に必然的に反映されている」などと講義で教わることはまずないでしょう。
せいぜい指揮科の学生くらいかも知れません。ピアノレッスンで教わることは、ほとんどないと思われます。
ですから、学校で音楽の先生から教わることなどありえません。
指揮法では曲の始めに「予備」と呼ばれる動きを示しますが、それは4拍子なら1拍目直前の4拍目を示す動きのことです。
この予備の一振りで、これから始まる曲の速度や強弱などをオーケストラに伝えることができます。
音楽にもよりますが、次の1拍目がどっしりとした強拍の重さを感じさせることができるのです。
つまり強拍とは、弱拍の上拍から下に向かって動きはじめ、加速しながら重く降りて行き、
次に急反転して上へとジャンプする瞬間の一点。跳ね上がって、減速しながら上で一瞬止まって反転する瞬間が、軽さを伴った上拍なのです。
この重い・軽いのリズムが反復しながら西洋音楽は前進して行きます。
これは1拍の8分音符♫2つの相互関係の中でさえも、この軽重が微妙に内包されていることが多いのです。
(この重い・軽いのリズムは、日本のスローテンポの雅楽や舞楽の中にさえ見られる、重要な音楽要素であり、雅楽の魅力要素の一つなのです。
これを私は、学生たちへの講義の中で、次のように説明してきました。
「その指揮棒や舞楽の舞の手の先に自分が乗っているとすれば、まるでジェットコースターの先頭に乗っているようなスピード感を感じることができる」と。)
もしこれを正しく感じながら、トランポリン上で跳躍している気分で上下に手を打ちながら歌えれば、決して速くなっていくことはありません。
Tさんは今日もまた一つ、音楽のとても重要な感覚を理解されました。
もちろん能力として身に染み込むまでには、一朝一夕にというわけには参りませんが。
なお、このようにきわめて音楽的な内容であり、また重要な音楽の感性に関わる内容ではあっても、
ほとんどの人は、それに触れて学ぶ機会に出会うことは、まずないでしょう。
ついでに、外国の人たちが「ワタシタチハ」と太字にアクセントを付けて話すのは、
ワを冠詞や前置詞的に感じ、太字で強拍や1拍目として感じているからなのです。
そういう言語習慣・クセがついているのです。
これが間違いなく、西洋音楽の土台にあるのです。
こんな基本的で重要なことさえも、授業や講義で聞かれることは、ほとんどないのではないでしょうか。
最後にとても重要な事を付け足します。
決してメトロノームに合わせてピアノを弾いてはいけません。
こう聞くと「ええっ?」と驚かれる方が多いかも知れませんね。これまでレッスンで、そのようにして教わってこられた生徒さんは、非常に多いと思います。
では、なぜそれが良くないのか。
そもそもテンポ・速度は、自分の感覚でコントロールするべきものなのです。
今回はじめに挙げた、1つ目の方法で、「自分の身体がメトロノームの役割を果たす」と書きましたが、それと共通する事なのです。
ところがメトロノームの音に合わせてピアノを弾いていると、機械の音に合わせることが目的になり、
主体的な自分の感覚として身につくまで、かなりの時間がかかってしまい、習得効率がとても悪いのです。
もっと悪いことに、機械の音に合わせようと真剣になればなるほど、
その音楽が持っている美しさやイメージが意識から消えてしまうという、
音楽表現上不都合な、とても恐ろしい事が起こりやすくなってしまうのです。
では、メトロノームはいったい何のために存在するのでしょうか。
その答えは、一つにはその曲で指定されたメトロノーム記号の速さや、アダージョやアレグロなどの「相対的な速度」を確かめるため。
そしてもう一つは、等間隔のビート感覚を養うため。
主にこの2つのために、メトロノームは使われるべきなのです。
特に重要な後者の使い方は、
もし手拍子を打った瞬間に、メトロノームの音が一瞬消えて聞こえなくなれば、それはめでたく人と機械の音が一致した瞬間。
メトロノームの速度を正しく捕まえられた瞬間なのです。
これはオーケストラの速度を牽引する、打楽器奏者のトレーニング法だそうですが、
これを遊び感覚でしているうちに、その人の均等なビート感覚が養われていくのです。
ぜひ皆さん、この遊びを通じて、あなたの拍感覚を磨いていってください。
さてあなたは、この無音状態を2つ以上連続させることができるでしょうか。
最後に、メトロノームに合わせる効果を重視される先生方の異論に対して少し補足しておきます。
例えばツェルニーなどの練習曲で、速い速度を維持しなければならない時には、
その出来具合をチェックする目的で、あくまでも補助的に、メトロノームに合わせて「試しに弾いてみる」程度にとどめるべきでしょう。
その場合でも、速度感覚を養う事のほうが大切なので、
メトロノームを使っての練習は、ピアノを弾かずに、機械の音に合わせてタカタカなどで(できれば音楽的に)歌う方法を勧めます。
あくまでも練習時に使用する目的は、前記したように、大事な音楽の感性を損なわないよう、速度感覚を養うためだけにとどめたいものです。
ツェルニーにだって音楽的要素はそれなりに存在し、その音楽を楽しみながら弾くこともできるのですから。
練習曲の仕上げに、メトロノームに合わせて弾く使い方では、指の訓練で終わってしまい、
「音楽の大事なもの」が抜け落ちてしまいます。
そんな演奏をするピアニストが日本にあふれている原因の一つは、こんな所にもあるのではないでしょうか。
(2019.3.19 ピアノレッスンクリニック芦屋 田島孝一)
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